フランスの銀工房歴史紹介NO.1
フランスの銀工房を紹介。第3回目です。
今回は2つご紹介。
まず、テタール(Tetard)の工房です。主にアール・デコに活躍した有力メゾンです。
まず、テタールのもとになったのがエミール・ユーゴーの工房です。このエミール・ユーゴーの時点すでにかなり有力な工房だったと推察され、かなり優れた品物を製造していました。そこを引き継ぎさらに名を挙げたのがテタール家となり、特にジャン・テタール(アンリの息子)はアール・デコの有名な銀職人となりました。また、19世紀末に大きな工房であったジャン・グランヴィーニュ工房はテタールが買収したとされています。テタールは90年代に廃業となりましたが、そのモデルはオディオに引き継がれています。流通量はそこそこあるので、手にされている方もいらっしゃるかと思います。エミール・ユーゴーももともとはどこかの工房を引き継いでいると思うので、この工房を歴史を探るのも面白いかもれません。
そしてもう1つ紹介。今回はこちらがメインです。オーコック(Aucoc)の工房です。日本では多分ほとんど知られていないのではないでしょうか。ですが、この工房はフランス19世紀では最重要工房の1つであり、格でいえばオディオ相当(ピュイフォルカやカルディヤックよりも上)です。シャルル10世からずっと王室に納め、政府関連製品の製造もおこなっていました。
ルネ・ラリックが修行した工房としても知られています。
※一族内でいくつかの流れがあると思われます(年号は参考までに)。一番下の画像はルイ&ジョルジュ親子の刻印です。
工房を設立したのはカシミール・オーコック。父親は金物屋をやっており、その流れで銀工房を始めました。すぐに成功を納め、その時々の国王(シャルル10世、ルイ・フィリップ、ナポレオン3世)に納めるようになりました。その息子ルイに引き継がれ(ルイはどうやら2代続いての名前のようです)、ルイは宝石商として大成功し、フランスを代表するジュエラーの一人となっています。そのルイに弟子入りしたのが、のちにアール・ヌーヴォーを代表する宝石商であり、アール・デコ期にはガラス工芸家となったルネ・ラリックでした。ルイは兄弟にアンドレがおり、アンドレは銀器を中心に制作していました。アンドレの流れは妻が引き継ぎ、ルイの流れは息子ジョルジュに引き継がれているのではないかと思います。ルイは息子ジョルジュと一緒に別の刻印を登録しており、レジオンドヌールの勲章などを政府の依頼により制作しています。
オーコック家はフランス王室へのサプライヤーであっただけでなく、英国王室やロシア帝室へも納めていた格式高い工房です。実は当店でも入手したことがありません。