シレジア エングレーヴィング装飾グラス≪Silesian engraved glass≫

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商品説明

全体に見事なエングレーヴィング装飾が施されたシレジアのグラスです。


シレジアの真骨頂ともいえるスタイルの美しい装飾です。エングレーヴィング装飾はシレジアが一番得意としたバロック様式がみられます。バロック様式は17世紀末からヨーロッパで流行した文化で、「いびつな真珠」が語源とされ、楕円形などを用いた過剰な装飾性が特徴としてあげられます。ボヘミアやシレジアでは1690年から1740年の間にピークを迎え、この地域のバロックの特徴としては優雅さがありながら田園風景を使用するといった独特な表現をしているところにあります。このグラスも直線と半円・楕円を合わせたようなバロック独特のデザインに加え、隙間がないほど装飾を加える手法はまさにバロック的である一方、図案の背景に森林などの風景を細かく彫りこむのはこの特徴といえるます。
そして、このグラスにはロココの装飾も見受けられます。ロココは18世紀に誕生した芸術様式で、優雅で耽美的、特に貝をモチーフにした装飾が特徴的でした(語源のロカイユは貝殻装飾の岩組を指す)。このグラスもボウル下部に装飾された貝モチーフの図案はまさにロココ当時の装飾です。このグラスはバロック最後の時代であるとともにロココの優雅さを加えたまさにこの当時の芸術様式を反映したデザインとなっています。

シレジアのエングレーヴィングによるデザインは狩猟文や貴族風景など多少の傾倒があるものの、図案が同じものというのがほぼなく、それは個々の注文に従って製作されたものであるということが推察できます。このグラスに描かれているのは「結婚」と「出産」をテーマにした2つの図案で、やはり注文品であろうと考えられます。片面には2羽の鳥が描かれ、上部に「Dass vergnugen da nicht fehlet wo sich lieb mit treu vermahlet」(愛と誠実さがあれば、喜びとともにある)と彫られ、もう片方には赤子を抱えた天使と、「Öolche fruhte auss den becken , mussen lauter lieb erwechken」(早く生まれ、愛を育まなければならない)と彫られています。


【シレジアのガラス】

シレジア(Silesia)は現在のポーランド南西部からチェコ北東部にあたる地域で、ヨーロッパでも複雑な歴史を持つ地域である。18世紀においては神聖ローマ帝国領のボヘミア王国に属し、ハプスブルク家が支配していた。 シレジアでは良質な原料が取れず、ボヘミアに頼った。ボヘミアとシレジアの間にはクルコノシェ山脈があり、ここでガラスの原料に使われる良質な珪石が取れていたが、ガラス原料に不可欠なソーダ原料がなかった。ボヘミアでは17世紀はソーダ原料をイタリアより輸入していたが、輸送途中における他工房の妨害・略奪等があり、不安定であった。そこで、ボヘミア間の高地の森林からソーダ灰の代わりとなる木灰を作り、ソーダ灰の代わりとして使用したガラスが製造されていた。これが一般的にカリ・ガラスと呼ばれるようになり、シレジアではボヘミアに注文をし、シレジア独特の美しい形状のガラス素地を輸入していた。 シレジアのガラスといえば、その彫刻技術が知られている。イェレニャ・グラ(ヒルシュベルク)を中心にカットとエングレーヴィング技術が開発・発達し、ヨーロッパでも随一のシレジア特有の優れた作品群を生み出し、各国の王族貴族から注文を受け制作するまでになった。ところが、マリア・テレジアが即位すると、オーストリア継承戦争(第一次・第二次シュレージエン戦争)、そして七年戦争(第三次シュレージエン戦争)と長い戦争が起こっていまい、その過程でシレジア・ボヘミアのガラス産業は荒廃し、その見事な技術は失われてしまうこととなった。



年代/PERIOD1740年代頃
刻印 /MARKなし
状態/CONDITIONコンディションb上部と下部の縁に小チップございますが、おおむね良好です。
サイズ/SIZE高さ 13.3cm

※状態についてはコンディション(商品状態)についてをご覧ください。




グラス1

細やかで丁寧な非常に手の込んだエングレーヴィング装飾。



ロココの装飾。

グラス2

その他の詳細情報

販売価格 0円(税込)
在庫状況 SOLD OUT