アンティーク・コールポートのカップ&ソーサー。
非常に美しい金彩装飾、そしてライラックカラーの印象的なアラベスク文様のお品です。1850年代頃、18世紀セーブルへ傾倒がイギリスでは流行し、優れた技術とともにセーヴルスタイルのお品が作られました。その代表的なメーカーがミントンや、コープランド、コールポートなどでした。
このカップもフレンチスタイルとなっていますが、セーヴルの忠実な再現というよりは、フレンチの技術やデザインをイギリス的に落とし込んだ作品に仕上がっております。
アラベスクの文様は1780年代〜1790年代にフランスで流行し、セーヴル窯をはじめフランスの窯でも流行しました(「アラベスク」は「アラビア風」という意味で一般的にはイスラム文様を指ますが、ルネサンスなど絡み合う植物と抽象的な曲線モチーフを特徴とする装飾スタイル全般のこともそう呼ばれます(西洋アラベスク))。
このカップもそのようなフランスを意識しているため、アラベスクの定番であるヤプラック(葉)を題材に装飾されております。ライラックの色合いが美しい装飾です。下地は転写も利用されています。
金彩は大変素晴らしく、手彩で細やかなに描かれております。部分的に磨きて艶をだすことにより模様を付けるバニシング装飾が施されているあたりも、イギリスでは珍しい装飾で、この技術を使用していた工房は限られます。
参考文献 Bibliography
『COALPOT 1795-1926』(1995、Michael Messanger)P.294に同形状・同ハンドルのカップ掲載、P.299にこの時期のサインの特徴についての解説。
【コールポート / Colaport】
英国の磁器工房。1790年代にジョン・ローズ(John Rose)が開業し、1799年にカーフレイ窯を引き継ぐ。当初は白磁出荷を行っていった。1820年に釉薬などの改良により芸術協会の金賞を受ける。ロココ・リバイバルの流行に乗り成長。1841年にジョン・ローズ死去、経営は甥のウィリアム・ローズ(William Rose)とウィリアム・ピュー(William Pugh)に移る。ランドルやクックといった優れた絵付け師によりフランス風の作品を製作。ピューは個人事業主としての活動となるも、1880年にピーター・ブラフ(Peter Bruff)が買収し、「Coalport China Co.」となる。アメリカなどへの輸出を中心に、華麗な磁器を製造するも、 1924年、コウルドンに買収。1926年には工場閉鎖、コウルドン工場に統合。1967年、ウェッジウッドグループに入る。
年代/PERIOD | 1850年〜1860年頃 |
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刻印 /MARK | 窯印なし(ソーサー高台縁にペインターサイン、素地にアルファベットの陰刻あり) |
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状態/CONDITION | 良好(製造時のムラ、経年のスレ多少あり)
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サイズ/SIZE | カップ直径 7.7cm 高さ 5.2m ソーサー直径 14.1cm |
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