ご挨拶
令和という時代において、「アンティーク」といえばいつの間にか雰囲気やSNS映えを重視した、曖昧な存在となってしまいました。
科学技術の発達、SNSやAIによる情報の氾濫が進む今日、生活は大変便利になっています。しかし、実用性や刹那的な見栄えを追い求めるあまり、心の中に“美”という概念を失ってしまっているのではないでしょうか。見栄えだけの中身のないものばかりが蔓延り、本質が見えず、人間の技術、作品への想い、美的観念が後退しているように思えます。科学技術は進歩していても、それは果たして“人間の進歩”と言えるのでしょうか。人は本当に“豊か”になっているのでしょうか。確かに美術や工芸品は最低限の生活の中では不必要なものです。しかし、その「不必要なもの」を見て美しいと感じる感性こそ、人間が人間たる所以ではないでしょうか。
当店では、18世紀から20世紀初頭にかけての西洋アンティークを取り扱っております。それは雰囲気や流行、SNS的消費を目的としたものではなく、美術的・歴史的・文化的文脈の中で成立した作品群です。
そして、扱うアンティークは「本物」にこだわっております。「本物」とはただ単に真贋が本物ということだけではなく、その物が、人間にとって本質的な価値をもたらすかどうか、という点に重きを置いています。それはただ単に美しいというものではなく、潜在的な内面性の美を持った品々です。人の手によって気持ちを込めて作られたものには、作り手の意志、社会的背景が必ず表れています。そしてそれらは喋ることはありませんが、我々より歴史を生き、その意義を語りかけてくれます。それらを咀嚼することにより、より豊かな生活を送っていただけるよう、多くの人にその意義を感じていただければ幸いです。
店主 中藪 達史