出典:当店販売品

ボウル 1932年デザイン
ルネ・ラリックの「Plumes de Paon」。孔雀の羽根がオパールセントガラスとプレス成型によって表現されている。

アール・ヌーヴォーからアール・デコへの変化はガラスの世界を一変させた。それまでの高い技術による1点ものの高級志向よりも、ある程度量産できるプレス成型のガラスが主流になっていった。中でも活躍したのが、アール・ヌーヴォー期には宝飾で名を挙げていたルネ・ラリックであった。特にオパールセントガラスは人気が高く、エトランやサビノなど多くの工房でも制作された。ほかにも量産タイプではないが、モーリス・マリノやマルセル・グッピーなどによる鮮やかで対比的なエナメル彩色も人気があった。パート・ド・ヴェールもヌーヴォーからさらに流行し、アルジー・ルソーやフランソワ・デコルシュモン、アマルリック・ワルターなどが活躍した。また、ガレのようなアール・ヌーヴォースタイルの被せガラスの人気は落ちていったが、アール・デコのスタイルを取り入れた被せガラスはシュナイダー(ル・ベール・フランセ)を中心に人気があった。

出典:メトロポリタン美術館

ティー&コーヒーサービス 1922年頃
ジャン・ピュイフォルカによるラピスラズリとシルバーのサービス。ジャンの活躍によりピュイフォルカはその地位を高めた。

典:Adolf de Meyer

写真 1921年頃
ジャン・パトゥのドレスを着た著名バレリーナであったDesiree Lubovskaの写真。

この時代はファッションに大きく変化があった。コルセットを使わない直線的なファッションが流行し、ファッションの幅が大きく広がった。レースやフリルといったものは使わず、機械的で平面を意識したデザインが流行した。ココ・シャネルやエルザ・スキャパレリといった優れたデザイナーが活躍した。香水も流行し、コティ、ロジェ&ガレ、ドルセー、フォルヴィル、ゲランなど多くのメーカーで優れた香水瓶が製造された。ルネ・ラリックやジュリアン・ヴィアール、バカラなどデザイナーが手掛けた香水瓶も多い。

ファッションの変化とともに、ジュエリーも変化した。幾何学的なデザインはもちろん、メリハリをつけた色使いが流行した。プラチナの使用が流行したこともあり、プラチナやホワイトゴールドの土台に脇石をダイヤモンドで固め、メインとなる石の色とのコントラストをつけるといったことが流行した。また、使用する宝石の幅も広がった。ジャン・デプレやシャルル・ジャコーなどが活躍した。また、ガラスやメタルを使用し、貴金属や宝石を使わないコスチューム・ジュエリーもアメリカを中心に流行しはじめ、ミリアム・ハスケルらが活躍するようになった。また、日本では御木本の養殖パールが1924年にパリ裁判で勝利し、世界中で広まった。

出典:Liberty Catalogue(当店保管)

1933年頃
アール・デコのジュエリー。直線的、色のメリハリを意識している。

出典:スミソニアン博物館

花瓶 1900年
オランダ、ローゼンブルクの製品。柔らかい曲線美の花瓶。

アール・デコは独特なスタイルの人形やオブジェに高い人気があった。素材は様々で、ブロンズや大理石、象牙、陶磁器などが主であり、ルネ・ラリックはガラスでカーマスコットなども製造している。人形といえばそれまではマイセンのような古典的なものや貴族趣味のデザインが一般的であったが、アール・デコのモチーフになったのは派手にダンスをする女性であったり、滑稽な恰好をしたピエロ、ツタンカーメンで沸いていたエジプトモチーフなどが多かった。フランスではデメートル・シパリュス、ポール・フィリップ、マックス・ル・ヴェリエ、オーストリアではゴールトシャイダー、ヨーゼフ・ロレンツル、ミヒャエル・ポヴォルニーなどが活躍した。他にも、ロブジュはデコを生活に取り入れポップなスタイルで人気ブランドとなり、エトランは若手のデザイナーを支援しその普及を支えたギャラリー経営をした。また、日本のノリタケなどもアール・デコ期には人形などを製造した。

1903年にヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザーによって設立されたウィーン工房は住居から生活品まで様々な場で、特に高級品市場で活躍していたが、第一次世界大戦によりウィーン工房も経営難になり、それまでの芸術性を重視したスタイルの変化を求められた。経済性を考慮したデザインへと移り、ダゴベルト・ペッシュなど新たなデザイナーが活躍するようになった。1925年のパリ万博ではオーストリア館を手掛けた。モダンデザインとして数多くの名品を製造したが、1932年に終わりを迎えた。

出典:selbst vektorisiert
ウィーン工房のロゴ。

アール・デコは何といってもそのデザイン性の高さである。量産化というのが1つのテーマであったため、幅は広く、数千万円のデザイナーものから数千円の日用品まであらゆる分野に広がった芸術様式である。アール・デコが流行した際には、ヌーヴォーのものは野暮で悪趣味なものと評価されるようになってしまった。日本より海外での評価が高いジャンルでもある。

【【参考文献】

『R.LALIQUE catalogue raisonne de l’oeuvre de verre』(FELIX MARCILHAC,2011年)