アンティークにはそれぞれの歴史背景があります。当時の社会情勢や芸術運動などのそれぞれの特色があります。ここでは西洋を中心に年代別に簡単に文化史をアンティークにからめてまとめてみます。
1690年代~1740年代
【バロックの終わり】
大きな芸術の流れであったバロックの影響は工芸にも大きく影響を与えた。
【光学の発達】
バロックは科学が発展した時代でもあり、その中で光というものが注目された。それは絵画にも大きく影響がみられる。また天体望遠鏡の発明やカメラ・オブスキュラの誕生といったように「目にみえるもの」という認識が大きく発展した。
【東インド会社の貿易】
中国・日本磁器の輸出
・柿右衛門様式、元禄・享保期伊万里の輸出
→マイセン(独)が誕生するなど西洋磁器の礎が築かれる
【鉛ガラス、カリガラスの流行】
ヴェネチアンガラスの影響からそれぞれ地域での発達
・イギリスでは鉛ガラスが普及、バラスターやツイストなど多様なガラスが生産
・ボヘミアなどでカリクリスタルの普及、エングレーヴィング技術も発達
【ユグノーの亡命】
亡命した銀職人が各国で活躍
→英国でのポール・ド・ラメリーなど
1750年代~1790年代
【ロココの流行(1730年~1790年頃)】
ヨーロッパ全土に普及
絵画
→アントワーヌ・ヴァトー、ブーシェ、フラゴナールなど活躍、ヴァトーの様式はのちにマイセンなどの工芸品にてワトー図として定番化されるなど工芸へも影響している。
工芸品
・貝などをモチーフにしたデザインが多く製造される。
(例)イギリスのファンシーバックスプーン、シレジアのロココ装飾グラスなど
→ロココが基となり、19世紀以降も定番化されたデザインは非常に多い。
【イギリス産業革命のはじまり】
機械の発明、工業の発展、生産技術の革新
・陶磁器の発展
→ウェッジウッドの発展、スポード創業など(英)
★セーヴル(Sevres、仏)やマイセン(Meissen、独)様式が各国で模倣される。
・工業化の発展に伴う金属製品の流通
→ワット蒸気機関にも関わったマシュー・ボールトンはバーミンガムにおいて銀器など工業を発展させる。(英)
・船の活躍
→工芸品のデザインモチーフとしてみられるようになる。
【イギリスにて茶法の制定(1773年)】
イギリス東インド会社に植民地での茶の販売独占権を与える。(英)
→ボストン茶会事件、アメリカ独立戦争へ(1775年~1783年)
アメリカ独立戦争による各国の多額の負債(英、仏など)
・イギリスでは銀製品などへの課税
→デューティーマーク(Duty mark)の誕生(英)
・フランスではフランス革命へとつながる
→アンシャン・レジームの終焉。様々な新法律の誕生。銀製品では鶏(Coq)の刻印の誕生。(仏)
→ロココ流行の終焉。
1800年代~1830年代
【各地で芸術様式の発展】
フランス
・ナポレオン覇権と帝政様式の流行
→ロココ様式と比べると直線的でシンプルなデザインだが、荘厳さと豪華さがある。
中欧(ドイツなど)
・ビーダー・マイヤー様式の流行
質素な反貴族的であり日常的でありながらもまだ優雅さのある装飾様式。
※新古典主義の流行(各国)
ギリシアやローマの古典様式に倣い、当時の解釈を加え写実的で洗練された芸術様式。
→ウェッジウッドのジャスパーウェアの誕生。
日本
・化成文化
→日本では文化・文政期に町人文化が発展。錦絵が流行し、西洋にも影響を与えた。
→葛飾北斎、歌川広重などの作品はヨーロッパにも伝わり、のちのジャポニスムへと影響を与えた。
1840代~1850年代
国際博覧会の開催
・初の万国博覧会(ロンドン)の開催(1851年)
→英国ヴィクトリア時代の繁栄を誇示。成功を収め、様々な博物館・美術館を設立。
・パリ万国博覧会の開催(1855年)
→ナポレオン三世時代の繁栄を誇示。
様々な発明
・銀板写真(ダゲレオタイプ)の普及(英)
→手描きのポートレートに取って代わるようになる。
・木材パルプ、タイプライターなどの発明。
・セルロイドの発明(英) → 失敗に終わる。
1860年代~1870年代
学問としての歴史学が確立
・ドイツやボヘミアでは歴史主義様式が流行。
→ロブマイヤーやフリッツ・ヘッケルトなどが活躍。
・イスラム文様の影響
→ウィリアム・モリスなど
日本の開国、明治維新
・パリ万博へ出展。ジャポニスムの流行。
→薩摩、九谷など日本陶磁器の輸出が盛んに。
→欧米各国で日本趣味の文様が工芸に盛んに取り入れられる。
・多国趣味
→アール・ヌーヴォーやユーゲント・シュティールなどへ影響。
1880年代~1910年代
アール・ヌーヴォーの流行
・フランスではエミール・ガレらの活躍によりガラス工芸が発展。
・ボヘミアではイリディッセント・ガラスが流行。
【様々な発明】
・白熱電球
→電球を使ったランプなどの電化製品の流行
【第一次世界大戦(1914年~1918年)】
・工芸の停滞
→アール・ヌーヴォーの終焉へ。
・軍の生活品の制作。
1920年代~1940年代
【産業の近代化、機械化】
大量生産化
・アール・ヌーヴォーのような1点制作は時代に合わず。
→アール・デコの流行
ルネ・ラリックなどの活躍。
【第二次世界大戦(1939年~1945年)】
・輸出陶磁器の打撃(日)
・ユダヤ人工芸家への影響