フランス1715年、ルイ15世が国王として即位する。フランスではポンパドゥール夫人が芸術家と交流したサロンを中心にロココが流行した。華麗で優美なロココの文化は絵画だけでなく、様々な工芸品も影響を与え、後世でもこのロココ様式は「ルイ15世様式」としてフランス工芸では定番のデザインとなった。そして1774年にルイ16世が即位すると、ロココは落ち着きを見せ、華美すぎず直線と均衡を重んじる装飾が流行するようになった。これもまた「ルイ16世様式」として後世の様々な工芸の定番のデザインとなっている。このように18世紀は後世へとつながる根幹的なデザインが発達した時代であった。財政難にも関わらず、貴族趣味の豪華なスタイルはやがて市民の反感を買い、ルイ16世は1789年に起こったフランス革命により、1793年に処刑となった。

出典:クリーブランド美術館
セーヴル チュリーン 1757年
いわゆるポンパドゥールピンクと呼ばれる色合い。ロココの影響が強くみられ、このスタイルは19世紀以降も定番となり、磁器はもちろんファイアンスでも多く見られる。
【その他代表的な工房】
・サン・クルー、シャンティイ、コント・ダルトワ、ディールなど
磁器の発展
東洋からもたらされた磁器はフランス貴族も熱狂させた。ルイ4世アンリ・ド・ブルボン=コンデはシャンティイ窯を設立し、軟質磁器を製造させた。初期の頃から働いていたデュボワ兄弟はこの極秘の製法を盗み出し、王室主導の下、1738年にヴァンセンヌ窯が設立し、1756年にポンパドール夫人の庇護の下セーヴルへと移転し、その後王立セーヴル製陶所となった。当初はマイセンの模倣を目的としてたため、マイセン写しが多かったが、そのずば抜けたセンスと技術により、非常に優れた磁器を製造した。セーヴルのデザインはヨーロッパ各地の磁器製造にも影響を与え、エキゾチックバードやロココの花絵など、ヨーロッパ磁器流行の中心となった。また、セーヴルには独占権が与えられており、他のパリの窯は規制を受け、存続と発展のために王族貴族に庇護を求めた。、マリー・アントワネットが庇護したクイーン窯、ルイ16世弟のプロヴァンス伯が庇護したクリニャンクール窯など、各王族・貴族はそれぞれに庇護する窯をもち、こぞって磁器を生産させた。しかしそれもフランス革命によって状況は一変することになった。
遅れたガラス産業
ルイ14世の時代、フランスでは板ガラスが非常に発展する一方、ルイ14世がグラスに興味がなかったため、ドリンキンググラスの発展は遅れた。中心となったデザインはファソン・ド・ボエムと呼ばれるボヘミア風のグラスであった(ボヘミアは当時グラス産業の最先端であった)。そのため、ドリンキンググラスの製造は決して高度ではなく、ガラス産業のメインは板ガラスとワインボトルといったガラスであった。その関係で、フランスではグラスを多く輸入していた。ルイ16世の時代になると、アメリカ独立戦争に関わったため財政難になり、貨幣の流出を防ぐため、グラスの国産化を目指した。イギリスから技術を取り入れ、鉛ガラス開発を開発した。1780年代になりサン・ルイやマリー・アントワネットが庇護した工房で鉛ガラスの製造に成功し、一気に発展した。

出典:当店取扱品
王室紋章革ケース付グラス。
1759年頃のグラス。ファソン・ド・ボエムと呼ばれるボヘミア風デザインのグラス。旅行用で、フランス王室の紋章が入った革ケースが付属する。

出典:グリーブランド美術館
アルジャンタンレース 1700年代前半
ニードルレースの一種であるアルジャンダンレース。レゾー(グラウンド)が六角形なのが特徴。1700年代後半はアランソンとの区別はできなくなる。
【その他代表的なレース】
・ヴァランシエンヌ、ポワン・ド・スダンなど
レースの流行と衰退
700年代前半は生活水準の向上したこともあり、レースの需要が増し、一般市民もレースを使用するようになった。フランドルのレースが中心で、ニードルレースは少なかったが、その中でも王立製作所の本部であったアランソンとアルジャンタンのレースが中心地として栄えた。1700年代後半は逆にボビンレースよりニードルレースが中心となったが、服装の簡素化に伴い需要が激減していくこととなった。
家具・インテリアの装飾
ルイ15世初期のバロック・ロココ様式の家具はフランス・オルレアン公様式やレジャンス(摂政)様式と呼ばれている。その後完全なロココ様式(ルイ15世様式)となり、猫足(ガブリオール)を脚に用いたりするなど曲線的なデザインとなり、ロココのモチーフでもある貝やアカンサスの葉がデザインされた。このようなロココ様式のインテリアや家具は現在でも多く製造されており、その影響は多大であった。

出典:メトロポリタン美術館
デスクチェア 1760年頃
ロココの影響を受けた椅子。
この時代のフランス芸術といえば、やはりロココである。日本でも西洋らしいデザインというと、今でもロココをイメージする人は少なくない。一方、この時代の品物特に金銀細工などは数が少ない。それは、この後に起こるフランス革命や戦争などにより貴族が手放してしまったためで、この時期のフランスアンティークは同時期のイギリスアンティークに比べても圧倒的に残されている数が少ないことが特徴としてあげられる。
【参考文献】
『フランス王家3人の貴婦人の物語展』(TBS、2001年)
『Porcelain of Paris 1770-1850』(Walker and company、1972年)
『Les poinçons français d’Or, d’Argent et de Platine de 1275 à nos jours』(VIAL)
『PORCELAINE FRANCAISE DU XVIIIE,MOTIF&MARQUES』(Antoinette Fay-Halle、2011年)
『A Dictionary of Lace』(Pat Earnshaw、1982年)