11th Avenue 文字と装飾

モノグラムの歴史と表現

時代ごとのモノグラム — 古代から現代へ

モノグラムには、時代の好みが表れる「様式」、ローマン・ゴシック・筆記体などの「書体」、重ねる・絡める・鏡像にするなどの「構成」があります。ミラーは構成の方法、アール・デコは時代様式なので、同じ階層の二種類ではありません。

ここでは西洋の古物・工芸を読むために、古代地中海からヨーロッパを中心とする現代の用例までを時代順にたどります。年代は地域や用途によって重なり、古い表現も繰り返し使われます。各時代の流行・役割と具体例を分けて読み、字形だけで制作年代を決めないことが大切です。

前4〜前1世紀を中心に / 古代ギリシア

小さな字の組合せで、貨幣を区別する

貨幣の識別記号/線を共有する圧縮した構成

ヘレニズム期の貨幣には、王名や人物像に添えて、複数のギリシア文字を一つに組んだ小さな記号が現れます。大きな装飾文字よりも、限られた面積に文字をまとめる点が特徴です。近代の姓名の頭文字と同じ読み方ができるとは限りません。

これらの記号の意味には未解明な部分があり、発行責任者・製作地・発行単位などとの関係が研究されています。どれも個人の署名だと決めつけず、同じ記号がどの貨幣に現れるかを比較します。

出典・参照箇所

4〜5世紀 / 後期ローマ

家名と身分を示す、密に組まれた文字

銀器・象牙・指輪/所有と社会的地位

後期ローマでは、有力な家や高官の名をまとめたモノグラムが、象牙製品、銀皿、匙、印章指輪などに用いられました。文字を一見して読み切れない複雑さも、教養や身分を示す表現の一部でした。

約402年のゲラルデスカ象牙板では、シンマクス家の名を表すラテン文字がMを中心に組まれています。二つの頭文字だけでなく、家名を構成する多くの文字を一つに収める使い方です。

出典・参照箇所

5〜7世紀 / ビザンツ

ブロック型から十字型へ

印章・建築/中心の字や十字に文字を集める

5〜7世紀のブロック型は、H・M・N・Πなどの中心となる文字へ他の文字を付けて組みます。6世紀半ばには、十字の腕に文字を配する十字型が好まれるようになりました。ハギア・ソフィアの柱頭にも、皇帝・皇后を示す組合せ文字があります。

印章用の指輪では、押した跡を読むために印面を逆向きに彫ります。これは装飾として左右対称にするミラー構成とは目的が違います。上下や向きの取り違えで読みも変わるため、印面と印影を分けて見ます。

出典・参照箇所

8〜9世紀 / 中世の王権

王の名を一つの記号にする

カロリング朝/貨幣に置かれる王名のしるし

カロリング朝では、王名を組み合わせた記号が貨幣にも使われます。Citécoが紹介するシャルルマーニュの銀貨(768〜814年、シェル製作)には、十字のある面とは別の面にKRLSのモノグラムがあります。

ここでの要点は、優美な筆記体の流行ではなく、王名を短い図形にまとめて権威を示すことです。後世の王室の組合せ文字と見比べると、同じ「王のしるし」でも文字の骨格や周囲の飾りが変わることが分かります。

出典・参照箇所

15世紀〜16世紀初め / 中世の信仰

聖なる名前を、器の中心に置く

IHS/宗教的な略号と植物文

中世末期には、キリストの名を略したIHSが信仰のしるしとして広く用いられました。メトロポリタン美術館のスペイン製ラスター彩皿(1430〜60年)は、中央のIHSを葉や花の装飾で囲んでいます。

同館は、聖名と同心円状の植物文を合わせる装飾が15世紀末〜16世紀初めのスペインとイタリアで好まれたと説明しています。ここでは持ち主の三つの頭文字ではなく、信仰を共有する記号を読む必要があります。

出典・参照箇所
  • The Met:IHSと植物文の皿 Dish with IHS Monogram and Floral Pattern。1430〜60年。聖名の意味と、15世紀末〜16世紀初めの装飾の流行についての所蔵解説。

15〜16世紀 / ルネサンス

作者の名を覚えさせる署名

絵画・版画/明瞭な頭文字と個人の標識

ルネサンスには、画家が作品に署名する習慣が広がり、姓名を頭文字や標章にまとめる方法も用いられました。デューラーのADのように、少ない文字を特徴的な配置にする署名は、作品を見た人に作者を示す役割を持ちます。

金工などの職人にも先行する記号の習慣がありました。ただし、似た字の配置を別の作者が用いることもあります。1540年の「モノグラミストAG」の肖像画はその一例で、署名の読みと作者の同定は分けて扱います。

出典・参照箇所

17世紀〜18世紀初め / バロック

王冠・唐草と、絡み合う王の文字

宮廷の贈答品・装飾/対称性と華麗な外枠

宮廷の装飾では、絡み合う文字に王冠や唐草を組み合わせ、所有者や贈り主の威光を示します。ルーヴル美術館のルイ14世肖像入り小箱(1680年頃)は、裏面に二つのLを絡めた王の記号と葉の唐草を備えています。

文字だけでなく、冠・宝石・枠・植物文が一体になった豪華さが、この作例の見どころです。同時に17世紀以降の手本帳は工芸職人や家庭の刺繍にも使われており、モノグラムを宮廷だけのものと考える必要はありません。

出典・参照箇所

1720〜1770年代 / ロココ

軽やかな曲線と、装飾された組合せ文字

食器・銀器・手本帳/曲線・花葉・非対称の外枠

ロココの装飾では、貝や葉、S字・C字に似た曲線、左右が一致しない外枠が特徴になります。モノグラムを見る際も、文字の左右対称性だけでなく、それを囲む装飾の動きに注目します。文字そのものは対称でも、周囲の枠は非対称という組合せがあり得ます。

1771〜72年のセーヴル「ロアン家用食器」の皿には、注文主のモノグラムが入っています。本ページのSympson(1750年)も同時代の組合せ文字を比べられる資料ですが、刊年が同じ時期だから全図案がロココ様式になるわけではありません。

出典・参照箇所

18世紀後半〜19世紀初め / 新古典・帝政

古典的な枠組みと、月桂冠の中の頭文字

新古典主義・アンピール/記念碑的な文字と権威の象徴

新古典主義からアンピールへ向かう装飾では、古代の形や文様が重視されます。ナポレオンの表現には、月桂冠で囲むN、鷲、蜂などが用いられました。文字の絡みを増やすだけでなく、中心の頭文字を象徴的な枠の中に明瞭に置く方法です。

N一字の記号も王や皇帝の「シフル」と呼ばれますが、複数字を一体化した狭い意味のモノグラムとは区別できます。複数字の例にはジョゼフ・ナポレオンのJNがあり、冠や月桂の装飾を伴う鍵などに見られます。

出典・参照箇所

19世紀中〜後半 / 19世紀の多様化

古い様式を選び直し、用途に合わせて飾る

歴史趣味・家庭の記名/簡素な形から華麗な形まで

19世紀のモノグラムを一つの「ヴィクトリアン体」でまとめることはできません。O’Kaneの1884年の図案集は、同じ文字の組合せに簡素な形から装飾的な形までを並べ、選んで使えるようにしています。家庭用リネンへの刺繍も続き、持ち主の表示と装飾を兼ねました。

書体と外枠の選択肢が増えた時代として、曲線の多い筆記体、骨格のはっきりした文字、歴史的な装飾の引用を見比べます。これは一点の品物を年代鑑定する決め手ではありません。19世紀の古風な文字を、そのまま中世の作品と判断しないことも大切です。

出典・参照箇所

1890年代〜第一次世界大戦 / アール・ヌーヴォー

植物の線と文字の線を見比べる

アール・ヌーヴォー/うねる曲線と有機的な装飾

アール・ヌーヴォーの視覚表現では、蔓や植物を思わせるしなやかな線、うねる曲線、独特の幾何学が使われました。文字の端が伸びる方向や、花葉の装飾とのつながりを見ることが、モノグラムを当時の装飾と比較する手がかりになります。

ただし1900年前後の字形がすべて植物的だったわけではありません。同時期には装飾を減らす図案もあり、ガラス器の注文見本にも古風な書体と新しい書体が併存しています。「曲線があるからアール・ヌーヴォー」と断定せず、器全体の意匠や資料の刊年も確かめます。

出典・参照箇所
  • V&A:Art Nouveau 1890年代初め〜第一次世界大戦という範囲、植物・有機的形態・曲線の特徴。モノグラム専用の分類ではなく様式比較の背景。
  • Turbayne:Monograms & Ciphers(1906年頃) 序文pp.xii–xiii。五つの書体群、簡素化の方針、重ねる・展開する・連続する構成。刊年は所蔵目録による。

1900〜1910年代 / 1900年前後の簡素化

装飾を整理し、書体と構成を選び分ける

工芸の手本と注文見本/曲線型・角形・簡素な文字が併存

Turbayneの1906年頃の手本は、装飾を整理する方針を示しながら、ローマン、ゴシック、サンセリフ、筆記体、ラスティックという五つの書体群を挙げています。簡素化は当時の一つの志向であり、他の書体が一度に姿を消したわけではありません。

Krug & Mundtの1906年ガラスカタログも、lateinisch、gotisch、modernなどの見本を同じ頁に並べています。ここでのmodernは、そのカタログが示す当時の「新しい」表現です。後のアール・デコと同一視せず、下の「モノグラムの呼称と仕組み」で字形・装飾・価格の選択を見比べられます。

出典・参照箇所

1920〜1930年代 / アール・デコ

円・直線・比率で文字を組み立てる

アール・デコ/幾何学・太細の対比・流線形

戦間期のアール・デコの文字表現では、幾何学的な骨格、細長い比率、強い太細の対比、平行線などが目立ちます。1925年のパリ装飾芸術博覧会は普及の重要な節目ですが、「アール・デコ」という名称が定着するのは後年です。

モノグラムでは、円や四角に合わせた外形と各文字の読める骨格を見比べます。ただし円形・方形の構成そのものは以前からあり、形だけでデコ期とは判定できません。下のアール・デコの表現例では、比率や線の整理を説明図で確認できます。

出典・参照箇所

1950〜1970年代 / 戦後のブランド

小さくても覚えられる、ブランドの記号へ

服飾・革小物/簡潔な重なりと繰り返し

戦後の展開の一つは、所有者個人の記名から、商品を横断してブランドを示す記号としての利用です。1961年のYves Saint Laurentのロゴは、Y・S・Lの三文字を簡潔に絡めています。装飾を整理しても、文字の重なりを使う伝統は続きました。

また、1896年に生まれたLVと花文のパターンは、1959年以降、街で使う鞄や革小物にも展開されました。一つの組合せ文字としてのモノグラムと、それを繰り返す総柄を分けて見ると、同じ語の使い方の広がりが分かります。

出典・参照箇所

20世紀末〜21世紀 / 現代

色や大きさを変える展開と、伝統の継続

ブランドの再解釈・王室のシフル/複数の表現が共存

現代には、既存の組合せ文字を保ちながら、色・素材・周囲の図柄を変える展開があります。Louis Vuittonの沿革にあるアーティストとの協業は、その具体例です。新しい見た目であっても、文字の核となる構成は過去の図案を受け継ぐことがあります。

一方で王室のシフルも続いています。2022年公表のチャールズ3世の記号は、CharlesのC、RexのR、数字IIIと冠を組み合わせます。現代を「簡素な文字だけの時代」とせず、ブランド、個人、制度それぞれの目的に応じた表現が併存する時代として読むとよいでしょう。

出典・参照箇所

モノグラムの呼称と仕組み

モノグラムは、文字の組み方に、書体や飾りを重ねて作ります。刺繍・銀器・印章・印刷物などに共通する文字装飾で、ガラスのカタログも、その呼称や選び方を知る手がかりになります。

カタログに記された呼称と見本

Krug & Mundtの1906年カタログは、書体に「冠付き」「装飾付き」「モダン」などの指定を組み合わせています。見本a〜iを価格表の同じ記号と照合すると、どの形がどう呼ばれたかを具体的に比べられます。

Krug & Mundt(1906年)見本a〜iと価格表の呼称
見本呼称形の特徴・区分
1906年カタログのモノグラム見本a
見本 a
ラテン字lateinisch 細い曲線と巻き込む線で文字を組む見本。ここでの「ラテン字」はカタログ上の書体区分です。
1906年カタログのモノグラム見本b
見本 b
ラテン字・冠付きlateinisch, mit Krone 文字の上に冠を添えたもの。書体の違いに、冠という装飾の指定を加えています。
1906年カタログのモノグラム見本c
見本 c
1906年カタログのモノグラム見本d
見本 d
ラテン字・装飾付きlateinisch, verziert cとdは同じ呼称で示された別見本。輪郭の飾りや点、小さな巻き込みなどの違いを見比べられます。
1906年カタログのモノグラム見本e
見本 e
ゴシック字gotisch 角を持つ太い画と曲線を組み合わせた見本。「ゴシック」はこの資料での呼称で、日本語のゴシック体(サンセリフ)とは意味が異なります。
1906年カタログのモノグラム見本f
見本 f
ゴシック字・装飾付きgotisch, verziert ゴシック字の骨格に、植物を思わせる線や小さな装飾を添えた見本です。
1906年カタログのモノグラム見本g
見本 g
ラテン字・モダンlateinisch, modern 太く流れる曲線を使い、大きな輪郭にまとめた見本。modernは1906年当時の分類名です。
1906年カタログのモノグラム見本h
見本 h
ラテン字・モダン・装飾付きlateinisch, modern, verziert gと同じ呼称に装飾付きの指定を加えたもの。文字の周囲へ伸びる線が、外形をより華やかにしています。
1906年カタログのモノグラム見本i
見本 i
ゴシック字・モダンgotisch, modern 角を持つ字画と太い曲線が交わる見本。価格表ではgotischの後に、上段のmodernを受ける同上記号があります。

呼称はこのカタログの表記に基づきます。modernは後のアール・デコと同義ではありません。価格表の同上記号は、参照する語を補って示しています。 出典:印刷図版84/PDF110ページ、価格表は印刷71ページ/PDF182ページ。

文字を組む三つの方法

文字を組む方法は一つではありません。Turbayneは構成を、Imposed(重ねる)、Extended(横へ展開する)、Continuous(連続させる)の三つに分けています。重ねる構成では文字を同じ範囲へ置き、横へ展開する構成では文字を横に並べたり、横へ展開しながら絡めたりします。連続する構成では、始めから終わりまで途切れず連続するように考えます。

同書は、文字が線の一部を共有するmonogramと、独立した文字を組み合わせるcipherを区別しています。ここでの区別はTurbayneの設計上の定義です。ほかの図案集ではcypherやmonogramの呼び方が重なるため、題名だけで構造を決めず、線のつながりを確かめます。

読むときは各文字の縦画・曲線・横画を探し、共有する線と交差する線を分けて見ます。書体を選ぶこと、文字を組むこと、冠や花葉を添えることは、それぞれ別の選択です。

AとBを同じ範囲へ重ねる例です。線の重なりと、それぞれの文字の骨格を見ます。大きく見る

本ページの説明図

重ねる構成

AとBを同じ範囲へ重ねる例です。線の重なりと、それぞれの文字の骨格を見ます。

出典:11th Avenue作図(Turbayneの構成分類を参照)
Monograms & Ciphers, 序文p.xiii/PDF17ページ

本ページが新たに作成した構成の模式図です。歴史的な原図の複製ではありません。

AとBを横に並べる例です。横へ展開する構成には、文字を絡めるものと並置するものがあります。大きく見る

本ページの説明図

横へ展開する構成

AとBを横に並べる例です。横へ展開する構成には、文字を絡めるものと並置するものがあります。

出典:11th Avenue作図(Turbayneの構成分類を参照)
Monograms & Ciphers, 序文p.xiii/PDF17ページ

本ページが新たに作成した構成の模式図です。歴史的な原図の複製ではありません。

LからCへ続く線の流れを示した例です。構成の連続性を考えるための説明図です。大きく見る

本ページの説明図

連続する構成

LからCへ続く線の流れを示した例です。構成の連続性を考えるための説明図です。

出典:11th Avenue作図(Turbayneの構成分類を参照)
Monograms & Ciphers, 序文p.xiii/PDF17ページ

本ページが新たに作成した構成の模式図です。歴史的な原図の複製ではありません。

注文資料の原頁と価格を見る

価格表も見本の性格を示します。aは1ダースにつき6マルク50ペニヒ、冠付きのbは10マルク、装飾付きのc・dは7マルク50ペニヒと記されています。これは当時の彫刻見本の価格区分であり、ガラス器本体の価格や現在の注文料金ではありません。文字の組合せだけでなく、仕上げの違いも注文内容と価格に関わっていました。

Choisy-le-Roiの1916年の配付記録があるカタログでは、図版1・2に食卓用サービスや各種用品向けの丁寧なホイール彫刻、図版3にホテル・レストラン向けの通常仕上げのホイール彫刻が示されます。さらに図版4には、ホテル名や施設の標章を含む別方式の彫刻見本が並びます。個人のイニシャルだけでなく、営業用の食器を識別する文字や標章も、ガラス装飾の注文に含まれていました。

彫刻の仕上げ見本 a〜i(1906年)大きく見る

原典の図版

彫刻の仕上げ見本 a〜i(1906年)

aはラテン字、bは冠付き、c・dは装飾付き。e・fはゴシック字の系統、g・hは原表で「modern」と呼ばれるラテン字の系統です。文字を同じ範囲に組む構成でも、線の太さ、曲線、飾りによって印象が変わります。

出典:Krug & Mundt, Leipzig, 1906
図版84/PDF110ページ、見本a〜i

11th Avenue所蔵資料。

出典の詳細
見本記号と仕上げを結ぶ価格表(1906年)大きく見る

原典の図版

見本記号と仕上げを結ぶ価格表(1906年)

図版のa〜iに、書体・冠・装飾の区分と価格が対応します。aは6マルク50ペニヒ、冠付きのbは10マルク、装飾付きのc・dは7マルク50ペニヒ。原表の価格欄見出しはDutzend(1ダース)です。

出典:Krug & Mundt, Leipzig, 1906
価格表p.71/PDF182ページ、Gravierte Monogramme und Wappen

11th Avenue所蔵資料。

出典の詳細
食卓用品に施すホイール彫刻の見本大きく見る

原典の図版

食卓用品に施すホイール彫刻の見本

原見出しは「食卓用サービスと各種用品のためのホイール彫刻見本」。1〜12は装飾見本の番号です。文字を重ねる位置、外形、線の太細や飾りの違いを比較できます。

出典:Cristalleries de Choisy-le-Roi, Album des services de table, garnitures de toilette & articles divers
図版1/PDF12ページ(1916年の配付記録がある資料)

11th Avenue所蔵資料。

出典の詳細
出典・参照箇所

表現の例:ミラーとアール・デコ

文字をどう組むか、どのような線で表すか。反転を使うミラー・モノグラムと、線や比率に時代の好みが表れるアール・デコを見比べます。

ミラー・モノグラム:反転で釣合いを作る

ここでは、文字の字形を左右に反転させ、元の文字や別の文字と組み合わせる構成をミラー型と呼びます。文字を反対向きに置くことで、左右の釣合いや一つのまとまりを作れます。Turbayneは字形の反転や上下逆転を装飾として用いること、天井・床・テーブルの天板や金銀器など、異なる方向から見られる品物との関係を論じています。

ABをBAへと並べ替えることと、AやBの字形を鏡のように反転させることは別です。下のABとBAの図案では、原図のAB・BAというラベルと、図の中の文字が実際にどちらへ向いているかを見比べてください。左右対称に見えても、異なる文字や飾りの線が含まれる場合があります。

反転や対称構成は18世紀の図案にも見られます。ミラー型という組み方だけで、アール・デコなどの時代様式を決めることはできません。同じ構成法でも、書体、線の太さ、輪郭、装飾の扱いによって印象が変わります。

左はABという文字順、右はAの字形を左右反転して組む例です。文字の並び替えと字形の反転を区別します。大きく見る

本ページの説明図

文字順と鏡像を比べる

左はABという文字順、右はAの字形を左右反転して組む例です。文字の並び替えと字形の反転を区別します。

出典:11th Avenue作図(Turbayneの反転文字の説明を参照)
Monograms & Ciphers, 序文pp.xvi–xvii/PDF20–21ページ

本ページが新たに作成した構成の模式図です。歴史的な原図の複製ではありません。

Sympson1750年本のAA(第1例)の原図大きく見る

原典の図版

AA(第1例)

原図上部の文字ラベルと、図の中で組み合わされた字形の向きを見比べてください。

出典:Samuel Sympson, A new book of cyphers, 1750
図版 1、AA(第1例)/PDF11ページ

著作権期間満了の原著図案。

Sympson1750年本のABの原図大きく見る

原典の図版

AB

原図上部の文字ラベルと、図の中で組み合わされた字形の向きを見比べてください。

出典:Samuel Sympson, A new book of cyphers, 1750
図版 1、AB/PDF11ページ

著作権期間満了の原著図案。

Sympson1750年本のBAの原図大きく見る

原典の図版

BA

原図上部の文字ラベルと、図の中で組み合わされた字形の向きを見比べてください。

出典:Samuel Sympson, A new book of cyphers, 1750
図版 1、BA/PDF11ページ

著作権期間満了の原著図案。

出典・参照箇所

アール・デコ:線と比率を整理する

1920〜30年代の文字表現には、直線や円弧を使った幾何学的な形、縦長の比率、上下に位置をずらした横画、太い線と細い線の対比、平行線などが見られます。アール・デコは1925年のパリ博覧会を節目に広まりましたが、多様な源泉や表現を含み、単一の字形へ統一された様式ではありません。

Samuel Weloの『Studio handbook, letter & design』(1927)は、同時代の広告用文字を知る資料です。所蔵機関のLetterform Archiveは、その「Modern Alphabets」に初期アール・デコと考えられる文字を見いだしています。これは当時のレタリングを比較する根拠であり、同書のすべてがモノグラムやアール・デコという意味ではありません。

モノグラムの構成そのものについては、ElizabethとCurtiss Spragueの『How to Design Monograms』(1927)の公開本文抜粋に、過度に装飾的な文字を組み合わせる難しさや、全体を円・正方形などへまとめる考え方が示されています。ミラー型・重ね合わせ・円形といった構成と、アール・デコの書体や線の表情を別々に観察すると、図案を比較しやすくなります。

左は円弧と直線で組んだ字形、右は縦長の比率の字形です。形と比率の違いを図で確かめられます。大きく見る

本ページの説明図

幾何学と縦長の比率

左は円弧と直線で組んだ字形、右は縦長の比率の字形です。形と比率の違いを図で確かめられます。

出典:11th Avenue作図(Letterform Archiveの文字造形解説を参照)
幾何学的な形状/縦長の比率の比較

本ページが新たに作成した構成の模式図です。歴史的な原図の複製ではありません。

左と中央のAでは横画の位置を変え、右のBでは太い縦画と細い曲線を組み合わせています。大きく見る

本ページの説明図

横画の位置と線の太細

左と中央のAでは横画の位置を変え、右のBでは太い縦画と細い曲線を組み合わせています。

出典:11th Avenue作図(Letterform Archiveの文字造形解説を参照)
横画の位置/ストロークの対比の比較

本ページが新たに作成した構成の模式図です。歴史的な原図の複製ではありません。

出典・参照箇所

参考資料と、図案の読み方

図案集と、持ち物のしるし

図案集と、持ち物のしるし

モノグラムは、文字を一つの図として組み合わせたしるしです。17〜19世紀の図案集や習字の手引書は、彫版・木彫・絵画・刺繍などに携わる職人にも利用されました。家庭のリネンに文字やモノグラムを刺繍する習慣には、持ち主を示し、家財を管理する役割もありました。

この資料室では、Sympsonの1750年本、Lockingtonの1777年本から、O’Kaneの1884年本、Turbayneの1906年頃の本、Auriolの1908年本へと、異なる時代の図案集を参照できます。文字だけを見比べるほか、印章・蔵書票・装飾のどこに使う図案なのかを原本で確かめると、表現の違いが見えてきます。

Turbayneは1906年頃の序文で、かつての華麗な装飾に対し、当時は簡素な字形が好まれると述べています。これは当時の著者の見方であり、すべての国や用途が同じ順序で変化したという意味ではありません。図案集の刊年と、実際の品物の制作年代も分けて考えます。

下の2図はSympsonの1750年本から選んだ、AとDを組む例です。原図上部のAD・DAというラベルと、Aの斜画や横画、Dの縦画と弧を見比べてください。

Sympson1750年本のADの原図大きく見る

原典の図版

ADの組み文字(1750年)

AとDを円形の中で組み合わせた18世紀の図案です。原図上部のADという文字ラベルと、文字の骨格を見比べられます。

出典:Samuel Sympson, A new book of cyphers, 1750
図版 2、AD/PDF13ページ

著作権期間満了の原著図案。

Sympson1750年本のDAの原図大きく見る

原典の図版

DAの組み文字(1750年)

DとAの組合せとして掲載された別の図案です。同じ2文字でも、配置や線の重なりによって姿が変わります。

出典:Samuel Sympson, A new book of cyphers, 1750
図版 2、DA/PDF13ページ

著作権期間満了の原著図案。

出典・参照箇所

同じ文字でもさまざまな組合せがあります。図案の一致だけで持ち主・作者・工房・年代を特定せず、品物の来歴やほかの資料と合わせて読みます。

1884年 An Encyclopaedia of monograms

James O’Kane

2・3・4文字の組合せを収めた図案集。New York: J. O’Kane, 1884。Boston Public Library所蔵。

書名は5,000例以上・130図版を掲げますが、独立集計ではありません。この所蔵本には図版91・129の欠落記録があります。

BPLは原資料以外の追加制限を主張しない方針です。個別のCC0表示は確認していません。著者の生没年などの確認を残し、本ページでは画像を掲載していません。

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1908年 Le second livre des monogrammes, marques, cachets et ex libris

George Auriol

モノグラム・標章・印章・蔵書票を含む図案集。Paris: H. Floury, 1908。Smithsonian Libraries所蔵。

単純な2文字モノグラムだけの本ではなく、標章・印章・蔵書票を含みます。著者は1863–1938。本ページでは参考書誌として紹介しています。

公開元の個別資料ページにCC0 1.0と米国Public Domainの表示があります。第三者の商標等とは区別します。

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[1906]年 Monograms & Ciphers

A. A. Turbayne and Carlton Studio

文字組合せの図案と設計の解説。London: T. C. & E. C. Jack, [1906]。Robarts Library, University of Toronto所蔵。刊年は目録によります。

所蔵本の汚れ・破れ等がスキャンに残ります。配布PDFの302ページは図案の点数ではありません。

Turbayne本人は1866–1940。Carlton Studioの共同制作者や図案ごとの帰属を未確認のため、本ページでは画像を掲載していません。

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1750年 A new book of cyphers

Samuel Sympson

絡み合う文字や反転文字を収めた銅版図案集。London: Printed for J. Bowles and son, 1750。University of California Libraries所蔵。

初版は1726年。初期版では1750年本の印刷図版1・2、PDF11・13ページから12例を選録。書名の600組は独立集計ではありません。

著者は1751年没。IAはNOT_IN_COPYRIGHTと表示しています。公開元のCC0付与を示すものではありません。

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1777年 Bowles’s New and complete book of cyphers

John Lockington; Carington Bowles

24枚の銅版図版を掲げる文字図案集。London: Carington Bowles, 1777。Getty Research Institute所蔵。

24枚という数字は書名の記載です。配布PDFは表紙・空白等を含む60ページ。全図案の独立集計は未実施です。

18世紀の原著と、公開元の画像利用条件を分けて扱います。個別のUse Restrictionsを未確認のため、本ページでは画像を掲載していません。

原本を読む ↗ 利用条件の出典 ↗

図版

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