表紙図版:武具を身につける戦士を描くアンフォラ / The Metropolitan Museum of Art 出典 / Public Domain・CC0(表示範囲を調整)
紀元前8〜前1世紀を中心に
ギリシャ・エーゲ海・東地中海
貯える、注ぐ、混ぜる、飲む。ギリシャの器は使い方に応じた形を持ち、その表面に神話や人々の姿を描きました。器の輪郭と装飾の関係は、後のヨーロッパでも繰り返し参照される造形の語彙となります。
このページの内容
器のかたちと使い方
古代ギリシャの世界は単一の国家ではなく、各地の都市とその交流から成り立っていました。工芸もアテネだけで完結せず、エーゲ海や南イタリア、東地中海へ広がります。本ページではアルカイック期からヘレニズム期までの陶器を中心に、その変化を見ます。
両手付きのアンフォラは貯蔵や運搬、クラテルは酒と水を混ぜるための器など、形には用途がありました。ただし、すべてが実生活の道具だったわけではなく、祭礼や葬送のために作られた例もあります。器名、寸法、出土状況を一緒に見ると、装飾だけからでは分からない使われ方が見えてきます。
参照:[1]
黒像式と赤像式
黒像式では、焼成すると黒くなる化粧土で人物や文様を描き、細部を線刻などで示します。赤像式では人物の部分に土の色を残し、周囲を黒くすることで、人体や衣の線を筆で描きやすくしました。赤い顔料と黒い顔料を単純に塗り分けたものではなく、粘土と焼成条件を扱う技術が表現を支えています。
アマシスの画家に帰属されるアンフォラは、武具を身につける戦士を描きます。器の表裏で同じ主題に小さな変化をつけており、持ち替えて眺めると動作の違いが分かります。「帰属」は研究上の判断で、この作品に作者の署名があるという意味ではありません。

アマシスの画家に帰属|紀元前550年頃|ギリシャ、アッティカ|テラコッタ、黒像式
メトロポリタン美術館蔵|06.1021.69
Rogers Fund, 1906
作品情報・出典 / Public Domain・CC0
描く装飾から、型でつくる浮彫へ
ヘレニズム期には、型で文様をつけた浮彫装飾の椀が広まりました。掲載のいわゆるメガラ椀には、ニケやポセイドンなど神話の人物が表されています。平面の絵を読むのとは異なり、光と影が小さな浮彫を際立たせます。
「メガラ椀」は発見地に由来して近代につけられた名称です。この型の器がすべてメガラで作られたという意味ではなく、アテネでの成立と複数の生産地が確認されています。工芸の名称と、実際の産地を同一視しないことも鑑賞の手がかりです。
参照:[3]

紀元前2世紀|ギリシャ、ヘレニズム時代|テラコッタ、型成形による浮彫装飾
メトロポリタン美術館蔵|41.162.91
Rogers Fund, 1941
作品情報・出典 / Public Domain・CC0
輪郭、余白、繰り返し
器の胴、肩、口縁は、それぞれ違う広さと曲面を持っています。人物を置く場所と文様帯を置く場所を見比べると、装飾が器形に合わせて設計されていることが分かります。神話の内容に加え、どこに絵を置き、どこを空けたかにも注目してみてください。
出典・参考資料
- The Met, Athenian Vase Painting: Black- and Red-Figure Techniques(2002)
- The Met, Terracotta amphora (jar) (06.1021.69)
- The Met, Terracotta Megarian bowl (41.162.91)
本文は上記の資料と作品情報を参照した解説です。作品名の日本語表記は説明用の訳です。年代・帰属の「頃」「恐らく」は所蔵館の記載に従います。図版は同館がPublic Domainとして公開する画像を使用しています。