ボヘミアンガラス / Bohemian glass アンティーク・ガラスの神髄(制作中)
ボヘミアン・ガラスの現代イメージとの違い
ボヘミアンガラスといえば、現代ではデパートにみられるような深いカットが全体に施されたイメージで、鉛を使ったクリスタルガラスも多いですね。そして総じてクオリティが決して高いとは言えず、フランスのバカラなどに比べても印象はいまいちという方は多いであろうと思います。ボヘミアンガラスで現在有名なメーカーはモーゼル(Moser)が知られているところだと思います。
しかし、アンティークのボヘミアンガラスは全く異なります。ハイクオリティのエングレーヴィング技術、あらゆるガラスを創造、各国への影響も与えた非常に素晴らしい作品群です。そこでここではその素晴らしいボヘミアンガラスと、深い関係にあり、優れたガラスを製造した隣地域のシレジアンガラスをご紹介します。
ボヘミアンガラス 1750年代 繊細で美しく輝く。
出典:メトロポリタン美術館
ボヘミア Bohemia
ボヘミアは現在のチェコ共和国の西部中部地方にあたる地域です。この地域は歴史的には複雑で、国名も何度も変わってきた地域です。日本では印象の薄い地域かもしれませんが、ボヘミアンガラスが栄えた18世紀は神聖ローマ帝国の一部であり、ガラス製造の先進国でした。ボヘミアは山脈に囲まれ、豊富な森林資源があります。その森林資源を利用してガラスが製造されました。特に南西部(ドイツとの境)と北部(シレジアとの境)でガラスが盛んに製造されました。
バロック / Barock
ボヘミアンガラスの発達はバロック期でした。バロックは16世紀末に始まり、18世紀半ばまで流行した芸術様式です。激しく、壮大な芸術様式で、ボヘミアンガラス発展期の中心的装飾となりました。ボヘミアンガラス発展の理由は、ボヘミアン・クリスタルと呼ばれる透明度の高いガラスが生まれたことによります。それまでガラス中心地だったヴェネチアが衰え、代わりに各地でガラス製造が発展しましたが、ボヘミアではザクセンから職人が移り住んだこともあり、カットやエングレーヴィング技術も発達し、ヨーロッパ屈指の美しいガラスを作り出すことができるようになりました。特に北ボヘミアとシレジアでは非常に優れたエングレーヴィング技術があり、王侯貴族から注文を受けていました。
1730年代。
出典:ザルツブルク美術館
サンドイッチガラス。1730年〜1745年。
出典:ヴィクトリア&アルバート美術館
2層のガラスの間に金彩を挟み込んだ非常に難しい技術によって作られた。多色のエナメルを用いたものもある。1900年前後にリバイバルが多く製造されている。
ロココ / Rokoko
18世紀半ばに流行した芸術様式がロココ。優雅で曲線的なデザインはボヘミアでも流行した。ロココの装飾は18世紀半ばの歴史主義以降も多く製造された
ロココの時代に流行した様式の1つとして貴族風景のエナメル彩があげられる。ロココのスクロール文様とともに多色エナメルで描かれる(1色の場合もある)。これは19世紀末になり、ロブマイヤーによって再現されたものが有名である。また、磁器の普及にあやかり、オパーリンガラスが製造された。
1770年代~1780年代。
出典:ヴィクトリア&アルバート美術館
ビーダーマイヤー / Biedermeier
ドイツを中心に流行した芸術様式、ビーダーマイヤー。荘厳で整然とした芸術様式はボヘミアンガラスの特徴的なスタイルとなりました。重厚なガラスに繊細で迫力のあるエングレーヴィング、ステイニングやラスター、エガーマンによる多色のガラスなど非常に特徴あるガラスが製造されました。1820年代頃から1850年代ごろまではほぼ同じ様式が続いた。
しかし、デザインモチーフとしては神話など古典的なものや鹿や風景など伝統的なデザインが多く、18世紀半ば以降は次第にフランスの先鋭的なデザインに後れを取るようになってしまう。

出典 : Art Institute of Chicago
歴史主義 / Historismus
機械化が進んだ19世紀半ばの工芸は進展がなく、非常に厳しい時代であった。そして次第に18世紀以前の手作業で優れた工芸品に興味を持つようになった。そしてそれらを再現した歴史主義が流行した。特に中世イスラムのガラス、そしてヴェネチアン、バロック&ロココのリバイバルを制作するようになった。
歴史主義で活躍したのがロブマイヤー社とフリッツ・ヘッケルトであった。特にロブマイヤーはクオリティが高く、ヨーロッパで高い評価を得た。フリッツ・ヘッケルトはロブマイヤーのような高度な技術ではなかったが、平均的なクォリティがあり、忠実に歴史主義を体現した。
また、この時代ジャポニスムが流行した。ボヘミアの工房もジャポニスムの作品を製造したが、フランスの工房に完全に後れを取っていた。

出典 : Art Institute of Chicago
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