ドイツ磁器ブランドとマーク
ドイツ磁器の代表的なブランドとそのマークをご紹介します。
マイセン / Meissen
1710年
アウグスト強王によりKöniglich-Polnischen und Kurfürstlich-Sächsischen Porzellan-Manufakturの設立
以前より、アウグスト強王が錬金術師のベドガーに白磁の製造を命じており、ベドガーはチルンハウス伯爵などから知識等のアドバイスを受けながら、1708年にヨーロッパで初となる白磁の磁器製造を成し遂げていた。その後、ヘロルトやケンドラーなどの活躍により発展。
1774年
カミーユ・マルコリーニ伯爵が工場長となる。
1814年まで。19世紀に入ると、マイセンは他公房との競争やナポレオン戦争の影響などもあり、長い不況へと突入することとなった。
1875年
双剣の窯印が登録商標をとる。
1850年から1924年までいわゆる「ボタン剣」と呼ばれる双剣のマークを使用。
1926年
ファイファーが工場長となる(1933年、国家社会主義政府により解雇)。
その後第二次世界大戦に巻き込まれ、終戦後の1950年、国営事業として国立マイセン磁器製作所となった。
マルコリーニが工場長の時期の作品には双剣の下に3本線による”星”のマークがつく。1774年〜1814年(1775年〜1815(7)年とも)。
このマークは1850年〜1924年の間に使われたもの。 剣の取っ手部分が丸く太くなっているのが特徴であり、ボタン剣と一般的に呼ばれている。
1924年〜1934年に使用されたマーク。ファイファー(Pfeiffer)が経営してた時期で、ファイファー期と呼ばれている。
【参考】
『マイセン磁器』(1990年、美術出版社)
マイセン公式HP
KPMベルリン / ベルリン王立磁器製陶所
1761年、ベルリンで、ゴツコフスキー(Johann Ernst Gotzkowsky)により磁器工場が操業、1763年に国王フリードリッヒが所有者となりKPM(Königliche Porzellan-Manufaktur)と呼ばれるようになった。ゴツコフスキーはマイセンの技術者を集めるなどし、技術を高め、ロココ、古典、ビーダーマイヤーとそれぞれの時代に適応していった。1918年に国営企業となる。第二次世界大戦時には空爆により工場は破壊されてしまう。しかし、ゼルプの工場で生産は続けられた。戦後、ベルリン工場とゼルプ工場は占領区域の違いから1949年まで別組織であったが、1957年に合併され、今はベルリンで生産されている。優れた造形技術・装飾技術はヨーロッパで最高水準である。

ブルーで描かれている杓と鳥のマークは1849年〜1870年に使用されたもの。その上にある赤い字のイニシャル(Friedrich Wilhelm IV)は1840年〜1861年に使用されたもの。下にある赤いオーブのマークについては後述する。

この形の杓のマークは1870年から使われているもの。1901年以降は刻印により年代別マークが付けられている。

杓の上にあるヴィルヘルム2世のイニシャルは1888年〜1918年に使用されたもの。ここでは1891年の文字があるので、1891年製と考えられる。

このマークは1943年〜1957年に使用されたマーク。KPMは1943年、第二次世界大戦の空爆により工場が破壊されてしまう。しかし、フッチェンロイター傘下のゼルプ工場を借り、操業を続ける。そのゼルプ工場で使用されたのが画像の"s"の付いたマークである。戦後、ベルリン工場が復活したが、占領している国が異なったため、2つの工房が同時に操業していた。1957年にゼルプ工場がベルリン工場に合併される形で廃止する。
KPMのマークを見るときに注意してほしいのが、杓のマークの下にある赤いオーブのマークである。このオーブのマークはKPMで絵付けされたものにのみ付けられるものである。KPMは絵付けをしていない白磁を大量に制作しており、他の工房や絵師によって絵付けされて市場に出回っているものも数多い。1832年以降、KPMにて絵付けされたものにはほぼ全てにこのオーブのマークが付いている。絵付けのマーク自体は1803年より使用されている。1803年から1813年までは青の線のマーク、1817年より1823年までは赤の線、1823年より1832年までは鷲のマークが使用されていた(強制ではない)。
ドレスデン / Dresden
マイセンに近い街で、素磁は他のものを使い絵付けのみをする工房が集まった。絵付けしていない白磁などを買い取り、絵付けのみを行った。当初はマイセンの贋作を多く製造していた。ドレスデンで素磁の生産までしていたのはカール・ティーメ(Carl Thieme)の工房だけとされ、それ以外はすべて絵付けしか行っていない。絵付けのレベルも粗悪なものもあるが、マイセンと肩を並べるほど素晴らしいものもある。贋作も造ったが、それぞれの工房のマークがしっかりあり、ドレスデンで絵付けされたものということをしっかり明記してある作品は価値が認められる。

カール・ティーメ工房(Carl theime)
日本でもSPドレスデンとして知られる。1872年創業、現在まで残っている。ドレスデンの中で唯一素磁の生産から行っている。

リヒャルト・クレム工房(Richard Klemm)
1869年〜1949年に活動。

アンブロジウス・ラム工房(Ambrosius Lamm)
1887年〜1949年まで活動。優れた絵付けを多く残している。
※マークの下に金彩が塗られているが、もともとここには素磁のブランドの窯印があり、それを金彩で塗りつぶしたもの。ドレスデンの作品でよく見かける。

この王冠のマークはドナートやローレンツ、ハマン、クレムなど多数の工房が1883年より1893年まで使用していた。
写真はドナート工房(Donath&Co)のもの。
1872年設立。1916年にリヒャルト・クレムと統合。ドナートは1893年以降も王冠のマークを使用した。


1843年から1945年まで活動。右のマークは初期マイセンのマークを模したもので、マイセンから訴えれたことで有名。


Hirsch工房
1894年設立。1930年ごろまで活動。
ルードヴィヒスブルク / Ludwigsbug
1729年、ガラス工房であった Elias Vaterが公爵Eberhard Ludwigに製磁工場の設立を提案。却下されたが、その後、その話を聞いた公爵Carl Alexanderが白磁制作を試みたが失敗。その息子Carl Eugenの時代になり、1758年になってやっと設立された。1760年にウィーン窯よりリンドラー(Josef Jacob Ringler)を招き、硬質白磁の製造に成功した。瞬く間に成長し、1760年代・1770年代を代表する窯となった。1805年に当時ルードヴィフィスブルグを支えていたFriedrich Wilhelm Karlがヴュルテンベルク(Wuerttemberg)の王となり、名称も変更された(Herzoglich-Konigliche Porzellan-Manufaktur Ludwigsburg、公王立ルードヴィフィスブルグ製陶所)。しかし、その後1824年に閉鎖。120年以上経った1948年に復活され、近年まで続いた。
ローゼンタール / Rosenthal
フィリップ・ローゼンタールが1879年にゼルプ近郊で創業する。優れた製品を多く制作しているが、マイセンやKPMとは趣が異なる。マイセンやKPMは伝統を重んじるのに対し、ローゼンタールは時代を捉え常に新しい物を造る姿勢である。個性があり、芸術性と実用性を兼ね備えている。ローゼンタールはトーマスやクライスターなどの窯を買収し、ババリア随一の工房に成長した。また、ドレスデンなどの絵付け専門工房の流行時には絵付けをしていない白磁を提供していた。ユダヤ人であったローゼンタールは1933年にナチスが政権を握ると、翌年工房を去ることになる。ローゼンタールはまさに時代と共に生きてきた工房なのである。近年では人形などを中心に人気が出つつある。

ニンヘンブルク / Nymphenburg
1743年、バイエルン選帝侯マクシミリアン3世ヨーゼフの命によりニンフェンブルク宮殿前に設立。1754年にリングラーによって磁器生産に成功、続いて1756年に絵付けにも成功した。1800年代になると財政悪化となり、1856年に芸術製品の生産を中止、民営となった。19世紀末に再度芸術的になり、ユーゲントシュティールの製品などを生産した。
フォルクシュテット / Volkstedt
テューリゲンにある工房。1760年にGeorg Heinrich Macheleidの要請により、数年後に設立された。ÄLTESTEVOLKSTEDTER PORZELLANMANUFAKTURとして磁器人形メーカーとして知られている。
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ここで紹介したのはごく一部で、実際にはここで紹介した以外にも多くのマークが使われております。また、マークの年代には諸説あるものもあり、あくまでも参考としてご覧ください。マークについてご質問等あれば、「お問い合わせ」よりご連絡ください。
参考文献
『マイセン磁器』(国立マイセン磁器公団史料編纂室、美術出版社)
『The Book of Meissen』(Robert E. Rontgen/Schiffer Pub Ltd/2000)
『Rosenthal Dining Services, Figurines, Ornaments and Art Objects』(Dieter Struss/Schiffer Pub Ltd/1997)
『Fachbuch Deutsche Porzellanmarken』(Robert E. R?・ntgen/Battenberg/2007)
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