ドイツ磁器ブランドとマーク
ドイツ磁器の代表的なブランドとそのマークをご紹介します。
マイセン / Meissen
1705年頃、アウグスト強王が錬金術師のベドガーに白磁の製造を命じ、ベドガーはチルンハウス伯爵などから知識等のアドバイスを受けながらヨーロッパで初となる白磁の磁器製造を成し遂げた。 その後ヘロルトといった絵付け師やケンドラーといった成型師が活躍しマイセンは発展していった。1875年には双剣の窯印が登録商標をとる。
マルコリーニが工場長の時期の作品には双剣の下に3本線による”星”のマークがつく。1774年〜1814年(1775年〜1815(7)年とも)。
このマークは1850年〜1924年の間に使われたもの。 剣の取っ手部分が丸く太くなっているのが特徴であり、ボタン剣と一般的に呼ばれている。
1924年〜1934年に使用されたマーク。ファイファー(Pfeiffer)が経営してた時期で、ファイファー期と呼ばれている。
id="dresden">ドレスデン / Dresden
マイセンに近い街で、素磁は他のものを使い絵付けのみをする工房が集まった。マイセンの絵付けしていない白磁などを買い取り、絵付けのみを行った。マイセン以外にもKPMやローゼンタールなどあらゆる素地を使っている。当初はマイセンの贋作を多く製造していた。アンティークショップなどでドレスデンのものという説明をよく聞くが、ドレスデンで素磁の生産までしていたのはカール・ティーメ(Carl Thieme)の工房だけで、それ以外はすべて絵付けしか行っていない。絵付けのレベルも粗悪なものもあるが、マイセンと肩を並べるほど素晴らしいものもある。贋作も造ったが、それぞれの工房のマークがしっかりあり、ドレスデンで絵付けされたものということをしっかり明記してある作品は価値が認められる。

カール・ティーメ工房(Carl theime)
日本でもSPドレスデンとして知られる。1872年創業、現在まで残っている。ドレスデンの中で唯一素磁の生産から行っている。

リヒャルト・クレム工房(Richard Klemm)
1869年〜1949年に活動。

アンブロジウス・ラム工房(Ambrosius Lamm)
1887年〜1949年まで活動。優れた絵付けを多く残している。
※マークの下に金彩が塗られているが、もともとここには素磁のブランドの窯印があり、それを金彩で塗りつぶしたもの。ドレスデンの作品でよく見かける。

この王冠のマークはドナートやローレンツ、ハマン、クレムなど多数の工房が1883年より1893年まで使用していた。
写真はドナート工房(Donath&Co)のもの。
1872年設立。1916年にリヒャルト・クレムと統合。ドナートは1893年以降も王冠のマークを使用した。


1843年から1945年まで活動。右のマークは初期マイセンのマークを模したもので、マイセンから訴えれたことで有名。


Hirsch工房
1894年設立。1930年ごろまで活動。左のマークは1894年〜1896年に使われ、マイセンから苦情があり、その後右のマークが使われた。
KPMベルリン / ベルリン王立磁器製陶所
1763年、国王フリードリッヒにより創業する。フリードリッヒはマイセンやヘキストの技術者を集めるなどし、技術を高めていった。ビスク焼きの作品や陶板画など高品質の作品を制作していたが、第二次世界大戦時には空爆により工場は破壊されててしまう。しかし、ゼルプの工場で生産は続けられた。戦後、ベルリン工場とゼルプ工場は占領区域の違いから1949年まで別組織であったが、1957年に合併され、今はベルリンで生産されている。優れた造形技術・装飾技術はヨーロッパで最高水準である。

ブルーで描かれている杓と鳥のマークは1849年〜1870年に使用されたもの。その上にある赤い字のイニシャル(Friedrich Wilhelm IV)は1840年〜1861年に使用されたもの。よってこのマークは1849年〜1861年製を意味している。下にある赤いオーブのマークについては後述する。

この形の杓のマークは1870年から使われているもので、若干の違いがあるものの20世紀半ばまで使われている。1901年以降は刻印により年代別マークが付けられている。

杓の上にあるヴィルヘルム2世のイニシャルは1888年〜1918年に使用されたもの。ここでは1891年の文字があるので、1891年製と考えられる。

このマークは1943年〜1957年に使用されたマーク。KPMは1943年、第二次世界大戦の空爆により工場が破壊されてしまう。しかし、フッチェンロイター傘下のゼルプ工場を借り、操業を続ける。そのゼルプ工場で使用されたのが画像の"s"の付いたマークである。戦後、ベルリン工場が復活したが、占領している国が異なったため、2つの工房が同時に操業していた。1957年にゼルプ工場がベルリン工場に合併される形で廃止する。
KPMのマークを見るときに注意してほしいのが、杓のマークの下にある赤いオーブのマークである。このオーブのマークはKPMで絵付けされたものにのみ付けられるものである。KPMは絵付けをしていない白磁を大量に制作しており、他の工房や絵師によって絵付けされて市場に出回っているものも数多い。1832年以降、KPMにて絵付けされたものにはほぼ全てにこのオーブのマークが付いている。絵付けのマーク自体は1803年より使用されている。1803年から1813年までは青の線のマーク、1817年より1823年までは赤の線、1823年より1832年までは鷲のマークが使用されていた。18世紀以前のKPMが市場に出回ることは少なく、KPMのものを見つけて、オーブのマークがなければ、それは疑ってかかるべきである。素地がKPM製でも、絵付けがKPM製でなければその分評価は下がるので注意したい。ドレスデンがKPMの素磁に絵付けを行ったものもある。なお、オーブのマークは赤がほとんどであるが、1911年以降は緑や青もある。
【KPM(ベルリン王立磁器製陶所)偽物(違うメーカー)のマーク】

以上はよく見かけるマークであるが、KPM(ベルリン王立磁器製陶所)のものではない。左上のを除けばkrister porzellan manufakturというメーカーのものである。だから正確には偽物というわけではないが、本家のKPM(ベルリン王立磁器製陶所)のものとは全く関係ない。本家のKPMにマークも似せて、絵付けも似せたりして少し悪意は感じる。少し古いアンティークについて書かれた本などではこれらも本家のKPMベルリンとして紹介されているが、全くの別物である。現在でもこれらのマークを本物のKPMベルリンと思っている人も多いので、注意してほしい。 なお、一番上の王冠にKPMの文字があるマークは日本のメーカーである。
ルードヴィヒスブルグ / Ludwigsbug
1729年、ガラス工房であった Elias Vaterが公爵Eberhard Ludwigに製磁工場の設立を提案。却下されたが、その後、その話を聞いた公爵Carl Alexanderが白磁制作を試みたが失敗。その息子Carl Eugenの時代になり、1758年になってやっと設立された。1760年にウィーン窯よりリンドラー(Josef Jacob Ringler)を招き、硬質白磁の製造に成功した。瞬く間に成長し、1760年代・1770年代を代表する窯となった。1805年に当時ルードヴィフィスブルグを支えていたFriedrich Wilhelm Karlがヴュルテンベルク(Wuerttemberg)の王となり、名称も変更された(Herzoglich-Konigliche Porzellan-Manufaktur Ludwigsburg、公王立ルードヴィフィスブルグ製陶所)。しかし、その後1824年に閉鎖。120年以上経った1948年に復活され、近年まで続いた。
ローゼンタール / Rosenthal
フィリップ・ローゼンタールが1879年にゼルプ近郊で創業する。優れた製品を多く制作しているが、マイセンやKPMとは趣が異なる。マイセンやKPMは伝統を重んじるのに対し、ローゼンタールは時代を捉え常に新しい物を造る姿勢である。個性があり、芸術性と実用性を兼ね備えている。ローゼンタールはトーマスやクライスターなどの窯を買収し、ババリア随一の工房に成長した。また、ドレスデンなどの絵付け専門工房の流行時には絵付けをしていない白磁を提供していた。ユダヤ人であったローゼンタールは1933年にナチスが政権を握ると、翌年工房を去ることになる。ローゼンタールはまさに時代と共に生きてきた工房なのである。近年では人形などを中心に人気が出つつある。

ニンヘンブルク / Nymphenburg
1743年、バイエルン選帝侯マクシミリアン3世ヨーゼフの命によりニンフェンブルク宮殿前に設立。1754年にリングラーによって磁器生産に成功、続いて1756年に絵付けにも成功した。1800年代になると財政悪化となり、1856年に芸術製品の生産を中止、民営となった。19世紀末に再度芸術的になり、ユーゲントシュティールの製品などを生産した。
フォルクシュテット / Volkstedt
テューリゲンにある工房。1760年にGeorg Heinrich Macheleidの要請により、数年後に設立された。ÄLTESTEVOLKSTEDTER PORZELLANMANUFAKTURとして磁器人形メーカーとして知られている。
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ここで紹介したのはごく一部で、実際にはここで紹介した以外にも多くのマークが使われております。また、マークの年代には諸説あるものもあり、あくまでも参考としてご覧ください。マークについてご質問等あれば、「お問い合わせ」よりご連絡ください。
参考文献
『The Book of Meissen』(Robert E. Rontgen/Schiffer Pub Ltd/2000)
『Rosenthal Dining Services, Figurines, Ornaments and Art Objects』(Dieter Struss/Schiffer Pub Ltd/1997)
『Fachbuch Deutsche Porzellanmarken』(Robert E. R?・ntgen/Battenberg/2007)
『ヨーロッパ アンティーク・カップ銘鑑』(和田泰志/実業之日本社/1996)
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