ジョージアン

ジョージアン

イギリス1714年、ステュアート朝が断絶すると、ドイツから迎えられたジョージ1世がグレートブリテン王国の国王となった。これが1901年まで続くハノーヴァー朝の始まりである。1724年からジョージ2世、1760年からジョージ3世、1820年から1830年までジョージ4世と、4代にわたり「ジョージ」の名が国王となったため、この時代のことをジョージアンと呼ばれている。この時代、特に18世紀は西洋アンティークにおいても重要な発展を遂げた時代でもあった。東インド会社を通じてもたらされた磁器や茶は磁器産業を発展させ、フランスから職人が移り住んで発展した銀器もまたイギリス独自の様式へと進化をし、ガラスもまた、ヴェネチアンに代わりクリスタルガラスを用いた独自の様式が発展した。大陸よりロココの影響を受けている作品も多くみられるのが特徴的である。


磁器の発展

17世紀、中国や日本の磁器が海を渡りヨーロッパに伝わった。東洋の磁器は、磁器生産がほとんどされていなかったヨーロッパに衝撃を与え、ヨーロッパの貴族や王侯の憧れとなった。そして、ヨーロッパでは磁器の開発へと着手し、最初に開発をしたのがドイツ(ザクセン)のベドガーであった。イギリスでは1740年頃にチェルシー窯やボウ窯にて磁器を製造、それは硬質磁器ではなく、軟質磁器であった。1760年代にプリマス窯はカオリンを使用して硬質磁器を製作。 その後、スポードやミントン、ウェッジウッドなどスタッフォードシャーを中心にイギリスの磁器は発展していった。東洋の磁器の影響を受けており、カップにハンドルのないティーボウルといったこの時代独特な食器も製造された。1799年にはスポードが原料に牛のボーンアッシュ(BONE ASH、骨灰)を加えたボーンチャイナの製品化に成功し、ウェッジウッドでもボーンチャイナの製造に成功するなど、イギリス陶磁器はボーンチャイナとともに発展していくこととなった。

チェルシー

出典:『CHELSEA PORCELAIN』(William King of the V&A museum,1922年)

チェルシー窯 柿右衛門写 1750年代

日本の磁器である柿右衛門様式の写し。初期のころはこのように東洋磁器の影響が強くみられる。


ウースター

出典:メトロポリタン美術館

ティーポット Worcester 1770年頃

Dr.ウォール期ウースターのティーポット。大陸の影響がみられるデザイン。

リヴァプール

出典:メトロポリタン美術館

ティーボウル Liverpool 1765年頃

リヴァプール窯のティーボウル。中国磁器の影響を受けたデザイン。1800年初頭まで、このようなハンドルのつかない東洋磁器の茶碗を小さくしたような形状をしたティーボウルが多く使用されていた。


銀器の発展

17世紀、フランスから逃れてきたユグノーの銀器職人はイギリスの銀器を大きく変わった。加えて、東洋からもたらされた茶の流行と相まって、イギリス銀器は18世紀に大きく発展。1739年にはプレート法が施行され、銀器の刻印もより明確に厳しく定まった。特に茶に関わる銀器は非常に発展し、大きなティーキャディーボックスやモートスプーンなどこの時代独特の銀器が製造された。スプーンにおけるオールドイングリッシュやキングスパターンなど現代まで続くスタイルが誕生したのもジョージアンである。また、バーミンガムのマシュー・ボールトンは、バーミンガムでの銀器の発展を支えただけでなく、産業革命に大きな影響をもたらした。

ピクチャーバック

当店所蔵

ピクチャーバックスプーン 1750年代〜1760年代

様々な絵がデザインされたピクチャーバックスプーン。こちらはフリーメイソンの絵がデザインされている。16世紀後半から17世紀初頭に発生したフリーメイソンは18世紀に各地に拡大していった。このようなフリーメイソングッズのコレクターは世界中に多い。


ガラスの発展

17世紀末にイギリスで初めて発明されたのがクリスタルガラス。ヴェネチアが中心だったガラス界は18世紀に各地で発展していった。とりわけイギリスではクリスタルガラスを用いた様々なガラスが製造された。特にバラスターステムやツイストステムなどのグラスは特徴的で、ジャコバイトグラスのように政治的な意味合いを持つグラスも製造された。ステムやフット、ボウルなどの形に一定の特徴があり、ツイストグラスなどは大陸や江戸時代の日本でも真似されて制作された。

オペークツイストグラス

出典:クリーブランド美術館

オペークツイストグラス 1750年代〜1770年代

白色のガラスがツイスト状にステムに入れらている。もともとはヴェネチアンガラスの影響を受けたもの。

ジュエリー

古代、ダイヤモンドの産地はインドであったが、1730年代ブラジルが産地として登場した。ブラジル産ダイヤモンドは当時としては莫大な量であり、オランダのアムステルダムやアントワープに加工工場が設立されし、ダイヤモンドの産業化が始まった。当時はバラのつぼみのような形をしたローズカットが一般的でオールド・マイン・カットやオールド・ヨーロピアンカットといったカットもあった。19世紀末ごろからは、昼間と夜の服飾を区別することが重要視され、愛情や友情などを表現するセンチメンタルジュエリーを昼間につけることも流行した。宝石の頭文字を使って「Dearest」や「Regard」などの言葉を表現したジュエリーもある。また、新古典主義の影響もあり、カメオも流行した。高級なストーンカメオをはじめ、シェルやラーバ(ヴェスビオ火山の溶岩)カメオも流行した。

リング

出典:メトロポリタン美術館

リング 1760年代頃

ローズカットのダイヤモンドがクローズドバックセンッティングによって配置されたリング。ダイヤモンドはオランダで、リング自体はイギリス製と推測される。


ジョージアンのアンティーク

ジョージアンの時代は様々な工芸が大きく発展し、また王族貴族もその発展を惜しまず後押しした。次のヴィクトリアンの工芸はジョージアンに誕生した様々な様式がもとになっているものが多く、後世へと続くデザインの基礎が確立された時代でもある。ジョージアンのアンティーク全般にいえることは、この時代のオリジナリティがあり、手作業による細やかで丁寧なつくりが全体的に多くみられることである。


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【参考文献】

『英国グラスの開花―チャールズ2世からジョージ4世まで』(村田育代、六耀社、2005年)

『世界ガラス美術全集 2 ヨーロッパ』(由水常雄、求龍堂、1992年)

『アンティーク カップ&ソウサー』(和田泰志、講談社、2006年)

『アンティークジュエリー』(別冊太陽骨董をたのしむ21、1998年)

『ジュエリーの世界史』(山口遼、新潮文庫、2016年)

『ANTIQUE SILVER』

『CHELSEA PORCELAIN』(William King of the V&A museum,1922年)

『Eighteenth Century English DRINKING GLASSES』(L.M.Bickerton、1971年)

『HALL-MARKS ON GOLD AND SILVER PLATE』W.Chaffers&C.A.MARKHAM(10版、1922年)

『SPODE-COPELAND-SPODE THE WORKS AND ITS PEOPLE 1770-1970』(Vega Wilkinson、2002年)

『DERBY PORCELAIN 1748-1848』(John Twittchett、2002年)

『The Dictionary of WORCESTER PORCELAIN VOlume1 1751-1851』(John Sandon、1993年)

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