
神聖ローマ帝国
1740年、オーストリア大公妃、ボヘミア女王、ハンガリー女王としてハプスブルク家のマリア・テレジアが即位した。1648年に成立したヴェストファーレン体制による相互内政不可侵の原理はすでに崩れ始めており、マリア・テレジアの継承に際して、その対立は表面化。シレジア(シュレージエン)をめぐって、プロイセンやザクセンとハプスブルク家においてオーストリア継承戦争が勃発してしまい、結果としてシレジアの土地を失ってしまった。そのような情勢のなか、文化としてはバロックやロココの影響は多大にみられ、有名なのがシェーンブルン宮殿であり、当初は金色にする予定であったが、マリア・テレジアが財政を考慮し黄色にしたことで知られている。バロックやロココの影響は工芸品にも大きな影響を与えている。また、1700年初頭にザクセン選帝侯は東洋の磁器を集め「日本宮」を作り、白磁の生産に成功するなど西洋磁器が勢いよく発達していった。
シレジアのガラス
ボヘミアとシレジアの間にはクルコノシェ山脈があり、ここではガラスの原料に使われる珪石が取れ、さらに高地の森林からはソーダ灰の代わりとなる木灰を使用したガラスが製造されていた。イェレニャ・グラ(ヒルシュベルク)を中心にグラヴィール技術が非常に発達し、各国の王族貴族から注文を受け制作をしていた。バロックやロココの様式はもちろん、貴族の生活風景など様々なデザインで製造された。ところが、オーストリア継承戦争(第一次・第二次シュレージエン戦争)、そして七年戦争(第三次シュレージエン戦争)と長い戦争の過程でシレジア・ボヘミアのガラス産業は荒廃し、その見事な技術は衰退していくこととなった。
出典:メトロポリタン美術館
ワイングラス 1740年頃
シレジアの特徴的なグラス。丁寧にロココのエングレーヴィング装飾が施されている。
ボヘミアのガラス
17世紀まではガラスの世界ではヴェネチアンガラスが席巻しており、ヨーロッパ各地ではヴェネチアンガラススタイルのガラスが製造されていたが、イギリスの鉛ガラス、ボヘミアのカリガラスの発明により透明度の高いグラスが登場し、ガラスの勢力図は一変した。ボヘミアでは優れたカットやグラヴィール装飾技術はもちろん、シュヴァルツロット(黒エナメル)や様々なエナメルを用いたガラスを製造したり、サンドイッチガラスと呼ばれる金彩をガラスとガラスの間に挟む装飾技術も埋まるなど、非常に高度な技術を有していました。特に貴族のハラフ家が所有していたガラス工場では類まれな名品が製造された。スタイルはバロックとロココが中心であり、この時代の装飾は後世になっても多大な影響を与えた。
出典:グリーブランド美術館
サンドイッチガラス 1730年頃
ガラスとガラスの間に絵を挟む技法。これは多色を使用した珍しいお品で、通常は金彩のみのものが多い。
磁器の発明・発達
東洋からもたらされた磁器は多くの王族貴族を魅了していた。ザクセン選帝侯フリードリヒ・アウグスト1世(ポーランド王アウグスト2世モツヌィ)もその1人であった。アウグスト1世は錬金術師ベドガーに白磁の生産を命じ、ベドガーは1709年に白磁の生産に成功した。翌年、ドレスデンに磁器工場が設立され、それがマイセン近郊に移りマイセン窯となった。その後、1718年頃、マイセンから引き抜かれた職人を登用しデュ・パキエによりパキエ磁器工房(ウィーン窯)が設立された。1744年、マリア・テレジアによって皇室傘下の窯となり、ハプスブルクの紋章の一部を窯印として使用し、多くの名品を作り出した。
出典:グリーブランド美術館
ティーポット 1723年〜1724年
初期のマイセン。神聖ローマ帝国のアンティーク
ハプスブルク家を中心とするアンティークは、栄えていたということもあり、非常に高品質なものが多いことが特徴としてあげられる。磁器にしろガラスにしろその他工芸品にしろ最高のものが製造されており、後世においてもこの時代の品物が基礎となっていることが多分にある。19世紀後半に流行した歴史主義はその代表的な例であり、マイセンをみても、この時代のモデルを今でも多く製造している。
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【参考文献】
『世界ガラス美術全集 2 ヨーロッパ』(由水常雄、求龍堂、1992年)
『GLAS 1500-HEUTE』(Michael Kovachek、1993年)
『FROM NEUWELT TO THE WHOLE WORLD / 300 Years of Harrach Glass』(Jan Mergl、2012)
『ボヘミアン・グラス600年の輝き』(日本テレビ放送網、プラハ国立工芸美術館、1994年)
『アンティーク カップ&ソウサー』(和田泰志、講談社、2006年)
『BERLIN PORCELAIN』(Anne R. Gossett、1980年)
『MEISSEN PORCELAIN』(Jim&Susan Harran、2006年)
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