ヴィクトリアン

ヴィクトリアン

1837年、イギリス・ハノーヴァー朝第6代女王としてヴィクトリア女王が即位、その後63年続いた時代はヴィクトリアンと呼ばれるようになった。各地を植民地化し、大英帝国は繁栄を極めており、1851年には世界初の万国博覧会となるロンドン万博が開催され、成功を収めた。1861年、最愛の夫であるアルバートが死去すると、悲しみに暮れたヴィクトリア女王はて隠遁生活を始めた。人前では常に喪服で、服喪時代が長く続いた。これはイギリス社会にも多く影響し、死者を悼むモーニングジュエリーや黒色を主とした装飾品などが流行した。ヴィクトリアンは独自の美術様式の発展は少なく、過去の芸術様式との折衷が多かった。その一方でウィリアム・モリスは産業革命後の大量生産を批判するなど芸術のあり方が問われた時代であった。


折衷様式

ヴィクトリアンは新しい様式の発生ではなく、過去の様々な様式が組み合わさった折衷様式が主であった。特にロココのデザインを中心に様々なデザインが用いられた(ロココ・リバイバル)。磁器で特に活躍したのはミントンやコープランドであった。特に1845年頃から流行したのがパリアンウェアである。新古典主義の影響で、釉薬をかけないビスク磁器で大理石彫刻をモチーフに製造され、特にミントンとコープランドは高い評価を得た。ガラスでは物品税が1845年に廃止されたことや、ボヘミアから職人が移り住んだことで発展が進んだ。スタウアブリッジを中心に技術が発展し、トーマス・ウェッブやベンジャミン・リチャードソン、ジョン・ノースウッドなどが活躍し、グラヴィール装飾が発展した。銀製品でもロココ・リバイバルが主流で、オリジナリティのあるデザインはさほど生まれなかった。ヴィクトリア女王のクラウン・ジュエラーとなったロバート・ガラード2世や電気メッキを商業化させたエルキントン社などが活躍した。

バーナード

出典:メトロポリタン美術館

コスメティックジャー 1874年〜1875年

バーナード兄弟による製品。旅行用セットの1つ。鉄道など交通機関が発達し、旅行がブームとなりつつあった。

【その他活躍した銀工房】

ロバート・ヘンネル、ハント&ロスケル、ライアスなど

minton

出典:メトロポリタン美術館

ポプリ 1860年代〜1870年代

ミントンのポプリポット。ヴィクトリアの工芸品ではこのようなガーランドの文様が好まれて使用された。

【その他活躍した陶磁器工房】

リッジウェイ、ダヴェンポート、ウースター、コールポートなど

コープランド

出典:グリーブランド美術館

メデア像 W.T Copeland & Sons 1870年〜1890年

コープランドによるパリアンウェア。


デザイン改革

ヴィクトリアンの工芸デザインはジョージアンを引き継いだものや相変わらず過去のデザインを用いた汎用なものが多く、さらに産業革命後の工業化の発達により品質の低下がみられた。1851年にロンドン万国博覧会が開催されると、国家としては成功を収めたが、工芸品の分野では多くの批判を浴びた。その代表的な人物が美術評論家ジョン・ラスキンであった。機械生産による工芸品に対する批判はバーン・ジョーンズ、ウィリアム・モリスに大きな影響を及ぼし、新たな芸術運動へと発展した。モリスは手工芸を通じて社会改革を目指し、植物模様の壁紙は有名で、現在でも多くの人に愛されている。

ウィリアム・モリス

出典:メトロポリタン美術館

トレリス 1862年デザイン

最初に生産されたのは1864年から。鳥のデザインはPhilip Webbによる。


インダストリアル・デザイン

ウィリアム・モリスが手工芸にこだわる一方、時代は工業化が進んでいくこととなり、当時としては異質なデザイナーの生まれた。ヨーロッパにおける最初のインダストリアルデザイナーともいわれるのがクリストファー・ドレッサーである。モダンデザインの先駆者であるとともに、日本文化へも傾倒し、イギリスにおけるジャポニスムの流行に大きく関与した。ドレッサーは陶磁器メーカーであるミントンの製品デザインも行った。

クリストファー・ドレッサー

出典:メトロポリタン美術館

キャンドルスタンド 1883年

クリストファー・ドレッサーがデザインし、Perry Son & Coで製造された作品。当時としては非常に斬新なデザインである。


ジュエリーの多様性

ヴィクトリアンはジュエリーがより身近なものとなり、様々なジュエリーが急速に流行し、1852年には新たに15金、12金、9金が金品位の基準として認められることとなり、金製品がより広がりを見せるようになった。スコットランドのケルト民族の文様をデザインしたスコティッシュジュエリーも流行するなどもした。また、髪が結い上げられるようになったことからイヤリングが注目され、長いものが流行した。そして何よりも服喪時代はモーニングジュエリーが大流行した。オニキスとのような黒色の石だけではなく、化石化した樹木である黒色のジェットも多く多用された。

カメオ

出典:メトロポリタン美術館

パリュール 19世紀半ば

イタリアのLuigi Sauliniによって制作されたオニキスのストーンカメオ。英国人John Gibsonによって王冠はデザインされている。

ヴィクトリアンのアンティーク

ヴィクトリアンのアンティークは日本でも手に入りやすく人気のジャンルとなっている。ジョージアンに比べると全体的に量産化され始めており、多様性があって、優れているものとそうでないものの差が大きくなっている。


当店のヴィクトリアンの商品をご覧ください。 →  英国ヴィクトリアンのアンティーク



【参考文献】

『アンティークジュエリー』(別冊太陽骨董をたのしむ21、1998年)

『ジュエリーの世界史』(山口遼、新潮文庫、2016年)

『COALPORT 1795-1926』(Michael Messenger、1995年)

『MINTON THE FIRST TWO HUNDRED YEARS OF DESIGN & PRODUCTION』(Joan Jones、1993年)

『SPODE-COPELAND-SPODE THE WORKS AND ITS PEOPLE 1770-1970』(Vega Wilkinson、2002年)

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